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『地球星人』村田沙耶香のおすすめ作品と感想【ネタバレ有】②

<2018/9/21 更新しました>

こんにちは、以前の記事を更新しました。

というのも、【地球星人 ネタバレ】で検索して下さる方が非常に多い。

一応最後までは書かないでおいたのですが、ご期待に応えるよう完全なるネタバレ記事を書きました。

どうぞご覧ください。

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村田沙耶香のおすすめ作品 3選(つづき)

 こんにちは、みつかるこ です。

昨日に引き続き村田沙耶香作品の素晴らしさについて書きたいと思います。

 

mitsukaruko.hatenablog.com

 

おすすめ3選ということで

『消滅世界』『しろいろの街の、その骨の体温の』を挙げてみました。

もう1作品を何にするか迷いに迷いました。

そして選んだのがこちら↓

 

 

 おすすめ その3 『素晴らしい食卓』

 「皆の、薄気味悪い食べ物に乾杯!」(p.90)

MONKEY vol.13 食の一ダース 考える糧

MONKEY vol.13 食の一ダース 考える糧

 

 *あらすじ*

妹の前世は魔界都市ドゥンディラスで戦う超能力者だったらしい。

妹は中学生の時にその告白をしてから

社会人になった今もそれを言い続けている。

 

そんな妹が婚約者の両親に手料理を振る舞うことになった。

故郷である魔界都市ドゥンディラスの料理を—

 

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柴田元幸さん編集の雑誌『MONKEY』にある短編。

(この『MONKEY vol13 食の一ダース 考える糧』は個人的おすすめ号。)

さくっと読めます。

この短さでこのメッセージ、このインパクトを残すとは恐ろしい作家です。

 

この記事を読んでくださる方を考えたときに

コンビニ人間』とか『授乳』はもう読んでいらっしゃるかなと思ったんですね。

村田沙耶香で検索すればいくらでもレビューが出てくると思います。

 

なので、比較的未読の方も多そうなこれを選んでみました。

この雑誌、価格は1200円+税です。

短編読むのに1200円は高いな、とか思われるかもしれませんが、

「素晴らしい食卓」も面白いけど、他の作品も素晴らしいので!

これで1200円は安いです。

日本人作家だけでなく、海外の作家の作品も読めるのも良いです。

柴田さんの訳は素敵だし。

知らなかった作家の作品に触れることができるので

『MONKEY』は本当おすすめ。

 

 

◆2018年8月31日発売『地球星人』

 この巨大な「人間工場」のための子宮は、私の下腹のなかですでに完成されていた。この臓器を「工場」のために使っているのだというふりをしないと、糾弾されはじめる年齢になろうとしていた。

『新潮2018年5月号』(p.99)

 

地球星人

地球星人

 

 *あらすじ*(ネタバレ有)

小学生の奈月はいとこの由宇と秘密を共有していた。

奈月が魔法少女でであること、由宇は宇宙人であること。

幼い2人は、自分たちをそう思い込んでいた。

 

奈月は家族に疎まれていて、母親は姉ばかりをかわいがる。

お盆に長野の秋級で、由宇と会えることを支えにしていた。

2人が会えるのは年に1回、 その1年間を我慢するために2人は「結婚」をした。

 

夫婦の決まり事を3つ決めた。

①他の子と手をつないだりしない

②針金で作った結婚指輪を、寝るときはつけること

③何があっても生き延びること

この3つを守り、また来年の夏会おうと約束をした。

 

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しかし秋級から帰った奈月の生活は、相変わらず母や姉にきつく当たられていた。

それに加え、塾の伊賀崎先生から性的虐待を受けるようになった。

体を触られることから始まり、それがエスカレートしていく。

奈月は、勇気を出して母親にそれを打ち明けるが

母親の反応は奈月をすべて否定するものだった。

「あんたがいやらしい」「汚らわしい」「気持ちが悪い子」

そんな言葉を投げつけられ、何度もスリッパで叩かれた。

 

奈月は「スイッチを切る魔法」を使った。

母親に叩かれても何も感じないように、と自分のスイッチを切り、耐えた。

奈月はこの状況の中で

由宇とした「なにがあってもいきのびること」の約束を思い出していた。

 

しかし、伊賀崎先生からの性的虐待は続いていた。

奈月の友達がきていると家に呼ばれ、そこで『ごっくんこ』をさせられた。

抵抗して怒らせたら殺されるかもしれない。

そうしたら由宇との約束が守れない。

奈月はまた心と体を切り離して、その時間を耐えた。

 

2日後に、奈月の祖父が亡くなった。

葬儀のために奈月たち家族は長野へ行くことになる。

伊賀崎先生のことで思いつめた奈月はやっと会えた由宇に

自分の身体が壊れる前に、セックスをして本当の夫婦になりたいと伝えた。

子どもの命は子どものものじゃない、大人が握っている。

母親に捨てられたら、大人の男の人を怒らせたらー

もしかしたら殺されるかもしれないから今しかない、と由宇に訴える。

 

由宇は戸惑いながらも承諾をした。

夜に2人は家を抜け出し、祖父の墓の側でセックスをした。

12歳だった。

その行為が大人たちに見つかり、以降2人は引き離されてしまう。

 

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それから22年後、

34歳になった奈月は3年前に結婚していた夫・智臣と暮らしていた。

奈月と智臣との出会いは「すり抜け・ドットコム」というサイトだった。

世間の目をすり抜けるための結婚だった。

 

「人間工場」では結婚し出産する「部品」になることを望まれている。

しかし過去の出来事から奈月は大人になっても性行為はできないまま

「人間工場」の「部品」になれずにいた。 

 工場からの監視をすり抜けるために、

工場のシステムを嫌悪している智臣と2人身を潜めていた。

 

しかし智臣が仕事を辞めた。

そして死ぬ前に秋級に行ってみたいと言い出す。

奈月は22年ぶりに由宇と再会を果たすが

由宇は工場に洗脳された地球星人になっていた。

由宇はもう自分を宇宙人だと言っていた子供の頃と変わっていた。

変わらない奈月を軽蔑しているようですらあった。

しかし秋級で、3人の共同生活が始まることになる。

 

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大人になった奈月は、もう魔法少女ではなくなっていた。

それは単純に大人になったから、ではない。

魔法少女ではなく自分をポハピピンポボピア星人だと名乗った。

 

由宇とのセックスが見つかり連れ戻されたすぐあとに、ある出来事があった。

奈月は『魔女』を殺した。

『魔女』は伊賀崎先生を操っている悪い魔女だ。

伊賀崎先生の家に、魔女がいる。

奈月は夜に、伊賀崎先生の家に侵入し、魔女を退治した。

魔女を退治したあと、ピュートは奈月がポハピピンポボピア星人だと教えた。

だから地球星人になじめなくて当然なんだと教えた。

 

奈月が魔女を退治した日に、伊賀崎先生は殺される事件があった。

つまり、奈月が伊賀崎先生を殺したのだが、奈月はそれを自覚していない。

 

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秋級に行ってからも奈月と智臣を監視する目があった。

2人の家族が監視をしている。

2人が結婚をしていながら子どもを持たないことに対して圧力をかけてくる。

人間工場の部品となるように、秋級にまで彼らの手が伸びてくる。

そして2人は工場に連れ戻されることになる。

 

 

智臣は、工場からはもう逃げられない、

奈月だけでも逃げるために離婚をしようと持ち掛けた。

 

奈月は自己防衛のために自分をポハピピンポボピア星人と思い込んでいるのだと、

心の端っこの方では気が付いていた。

智臣に、子どもの頃に伊賀崎先生を殺したかもしれないと伝えた。

 

しかし、智臣は奈月は宇宙人だから

地球星人を殺すのは大したことじゃないと受け入れる。

智臣は一貫して、奈月はポハピピンポボピア星人だと言ってくれた。

奈月は自分を受け入れ続けてくれる智臣に、一緒に逃げようと持ち掛けた。

 

そしてそこに、心変わりをした由宇も加わった。

3人で再び、秋級へ逃げることになる。

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ポハピピンポボピア星人として生きることになった3人の生活は

地球星人の頃とずいぶん変わった。

自分たちを1匹、2匹、と数え、家は巣と呼んだ。

素の中では裸で過ごし、食料として植物を採取し動物を捕まえ暮らした。

そして民家から食べ物を盗んだ。

 

そんな3匹の巣に侵入者がやってきた。

それは奈月が昔殺した伊賀崎先生の両親だった。

犯人が奈月だと知り復讐のために襲ってきたが、逆に3匹に殺された。

2人の地球星人の死体を見て

ポハピピンポボピア星人たちはそれを食料にしようと提案する。

地球星人を捌き、それを食べた。

それは美味しかった。

奈月の口は子どもの頃に、伊賀崎先生に『ごっくんこ』をさせられたときに

壊されたままだったがやっと治って、味がした。

 

3匹はこのまま食料が尽きることが起きるようなら

1匹だけでも生き延びるように他の2匹を食べる約束をした。

そしてお互いに味見をした。

 

そしてしばらくしてから、3匹は地球星人に発見されることになる。

 

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放心状態です。

前回の記事でも書きましたが

村田沙耶香という名の聖女による救済…

そしてこれは祝福であるのかとすら思います。

この窒息しそうな工場を告発してくれたんですよね。

 

不良品だと見つからないように

必死に正常な部品のふりを続けてきたけれど

この工場こそが異常で、聖地を目指すべきなのかもしれません。

 

奈月は自分を魔法少女やポハピピンポボピア星人だと言ったけれど

魔法くらい使えないと少女は生きていけなかったこと

自分が地球星人ではない別の星の生物だと思わずにはいられなかったことを思うと

どれほどこの世界は排他的で暴力的で歪んでるのかと考えずにはいられません。